子どものいじめ/早期発見へSNSを活用

いじめが、後を絶たない。文部科学省によると、2016年度に全国で32万3808件が認知され、過去最多を記録した。こうした中、早期発見・解決へ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用する試みが注目されている。LINEでの相談事業を試行した長野県の取り組みなどを紹介する。

『変化する若者の交流手段』

「いじめを見逃さないよう、普段から気を遣っているが、悪ふざけなどとの見極めは難しい」。こう話すのは、近畿地方の中学校の教員だ。子どもたちへの声掛けも積極的に行っているが、「授業や学校行事の準備、保護者への対応などで、生徒一人一人と向き合うには時間が足りない」のが実情だという。


一方、文科省は、子どもの相談体制の充実へ、小中学校へのスクールカウンセラー配置を進めてきた。しかし、非常勤のカウンセラーは週1回しか学校にいないケースも多く、子どもたちが常に相談できる体制にはない。


そこで同省では、いじめに悩む子どもたちの受け皿として、電話相談窓口「24時間子供SOSダイヤル」を設けており、16年度は約4万件もの相談が寄せられた。それでも、いじめを早期に発見する対策としては、まだ十分とは言えない。


このため、注目されているのが、多くの若者が慣れ親しむLINEなどのSNSの活用。最近の若年層の交流手段は、音声通話よりもSNSの活用が圧倒的に多くなっているからだ。総務省の調査によると、10代が平日に携帯電話で話す時間は平均で2・8分にすぎないが、SNSを利用する時間は57・8分にも上る。


『長野県がLINEで実験/中高生から多数の相談/2週間で電話1年分上回る件数』

長野県は今年9月、中高生を対象にLINEでのいじめ相談事業を試行した。同県は、未成年の自殺死亡率が全国で最も高い。このため、いじめに悩む中高生への対策を検討していた。


そうした中、公明党長野県本部青年局(中川宏昌局長=県議)が昨年実施した調査活動を踏まえ、今年2月に行ったいじめ相談にSNSの活用を求める提言などがきっかけとなり、県はLINE株式会社との連携協定を締結した。


同県は、LINEアカウント「ひとりで悩まないで@長野」を開設。県内の全中高生約12万人に、学校を通じて案内資料を配布したところ、約3700人が登録した。相談では、中高生が「悩んでます」などとメッセージを送ると、相談員(カウンセラー)が「どうしたの?」などの返事をし、アドバイスした。


9月10日〜23日の2週間、午後5〜9時の時間帯で相談を受け付けると、1579件のアクセスがあり、547件の相談に応じた。これは、16年度の県の電話相談259件を大きく上回った。県教育委員会心の支援課の小松容課長は「予想以上の相談件数に驚いた」と語る。現在、結果を分析中だ。


LINEでのいじめ相談は、滋賀県大津市もきょうから18年3月まで行う。


 『千葉・柏市は匿名通報アプリを提供』


このほか、千葉県柏市では今年度から、匿名でいじめを通報できるアプリ「STOPit(ストップイット)」を市立中学校の全生徒に無料で提供している。


このアプリは、14年に米国で開発されたもので、いじめを目撃した生徒や被害者がいじめの内容を書き込むと、匿名で市教育委員会に情報が届く仕組み。市教委は学校と連携して問題解決につなげたい考えだ。市教委によると、9月13日までに63件の相談を受けた。


米国では中学や高校など約6000校で277万人が利用。いじめの減少が報告されているという。


 『来年度、一部地域で実施』


国もSNSを活用した、いじめ相談体制の構築に取り組む。文科省は18年度予算の概算要求で約1億円を盛り込み、一部の学校や地域で試行する方針だ。

24時間対応の可能性や個人情報の管理のあり方、相談に乗る立場の人の育成などについて検討する。


公明党は、小中学校へのスクールカウンセラーの配置拡充や、いじめの早期発見・対応を学校に義務付けた「いじめ防止対策推進法」(13年9月施行)の成立をリードするなど、いじめ防止に一貫して取り組んできた。SNSの活用については、党文科部会の浮島智子部会長(衆院議員)が今年3月、松野博一文科相(当時)に提案するなど積極的に推進している。



公明新聞   2017年11月01日付け