日本のアニメ、世界市場での課題

世田谷区議会議員の福田たえ美です。

日本のアニメ、世界市場での課題

アニメ
 
ビジネスモデルの転換急務

 今や日本が世界に誇る文化であるアニメ。アニメなどのコンテンツ産業は、国の基幹産業として位置付けられ、経済成長をけん引する分野として期待されている。
 ただ、海外需要の拡大が日本企業の収益増につながっていないなど課題も多い。日本アニメの海外展開の現状や求められる取り組みについて解説する。

■海外売上10年で6倍強に/国内企業の回収率は6%

 日本動画協会によると、2023年のアニメ産業の市場規模は前年比で4188億円増加し、3兆3465億円で過去最高を更新した。

 アニメ産業成長の原動力となっているのが海外市場だ。13年からの過去10年で見ると、海外売上高は2823億円から1兆7222億円と6倍強まで拡大し、国内売上高を979億円上回った。同協会は「この逆転現象は重要な転換点」と指摘する。

 デジタルプラットフォームによって日本アニメの海外売上が拡大する中、課題となっているのが売上回収率の向上だ。

 経済産業省によると、22年時点で、アニメ産業の海外売上高は1兆4592億円に上るものの、このうち国内制作会社などの収入額は856億円で回収率は6%にとどまる【表参照】。売上の多くは海外企業に流れているのが現状だ。

 日本では売上の数%を受け取るライセンスビジネスが主流だ。これはリスクが低い半面、得られる利益が限定される欠点もある。海外企業にマーケティングを任せるのではなく、日本企業が海外に直接拠点を構築し、作品の配給をはじめ、グッズ販売やイベントなどを進めるビジネスモデルへの転換が求められている。

 また日本アニメの制作会社では、海外のプラットフォーマーからの受託制作が広がっている。このため、価格決定権が海外企業にあり、契約内容の透明化にも課題がある。将来的には日本で制作したアニメを日本のプラットフォームで世界に広げる仕組みも望まれている。

 実際、同じコンテンツ産業のゲーム産業では、現地での販売やイベントを日本企業が担っていることが多く、海外売上の回収率は89%に上る。

 経産省の担当者は「回収率が高まればクリエイターの収入向上にもつながる。日本アニメの海外売上の多くは配信が占めており、アニメ産業の主力であるグッズ販売やイベントに力を入れれば、さらに伸びしろはある」と語る。

■作り手の人材確保や待遇改善も

 日本アニメの需要が世界的に高まるに伴い、アニメーターの人材確保や待遇改善も欠かせない。特に賃上げの原資を確保するためには、制作会社の利益を着実に増やしていくことが欠かせない。

 しかし、アニメ市場全体は成長している一方で、制作のみを担うアニメ制作会社の売上は伸びていないのが現状だ【グラフ参照】。

 背景には、アニメ制作の主流となっている「製作委員会方式」がある。

 製作委員会は複数の企業が出資し合い、出資額に応じて利益を分け合う仕組みだ。

 だが、大半が中小企業の制作会社では、出資できるほどの資金力がなく、製作委員会に入れないケースが多い。このため、アニメがヒットしても成功報酬は限定的で当初決めた制作費分しか手にできない。

 こうした状況を改善するためには、制作会社が製作委員会に参入し、アニメ作品の成功に応じて利益を受けられる仕組みに変えていくことが重要だ。

 また、アニメ制作の従事者は、労働環境が保護されにくいフリーランスの割合が高く、低賃金や長時間労働などが指摘されている。契約条件や労働環境の改善を推進していくことも求められている。

■政府が支援パッケージ

 政府は先月19日、アニメなどコンテンツ産業の海外展開を促進する施策パッケージを取りまとめた。

 具体的には、アニメや映画といったコンテンツ産業の海外展開を複数年にわたり支援することやアニメーターの労働環境を整備することなどを盛り込んだ。また、著作権を侵害する海賊版対策にも力を注ぐ。

 政府は、33年にコンテンツ産業の海外売上高を現状の3倍超となる20兆円にする目標を掲げており、今後、安定的に制作できる体制を整え、海外市場における収益拡大につなげていく方針だ。

公明新聞

公明新聞 2025/10/13

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世田谷区議会議員     福田たえ美

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