共生社会の実現を推進するための認知症基本法

世田谷区議会議員の福田たえ美です。

公明が強く推進してきた認知症基本法が本年6月に成立。

世田谷区では、国の法律制定に先駆けて、公明党世田谷区議団の推進で「世田谷区認知症とともに生きる希望条例」が、令和2年10月に施行。

認知症のご本人から、貴重なご意見から、必要な施策を進めています。

いよいよ、令和6年1月施行。

希望ある共生社会の実現へ

 
 公明党が強力に推進し、超党派の議員立法で6月に成立した「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が来年1月に施行する。
 
高齢化が急速に進む中、認知症に関する初の法律がめざす社会とは。鳥取大学医学部の浦上克哉教授と、日本認知症本人ワーキンググループの藤田和子代表理事への取材を交えて探った。


<解説>
■当事者の意見、施策に反映/自治体に計画策定求める

 2025年には、65歳以上の5人に1人、約700万人が認知症になると推計される。40、50代の働き盛りでも発症し、いつ誰が認知症になっても当事者や家族らが安心して暮らせる環境づくりが喫緊の課題だ。

 全37条からなる基本法は、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、施策の総合的かつ計画的な推進を目的に掲げた。
 
重要なのは、現に認知症である人や家族を支えるだけではなく、広く国民一人一人が相互に人格と個性を尊重し、支え合いながら共生する活力ある社会(共生社会)の実現をめざしている点だ。

 基本理念では、全ての認知症の人が基本的人権を享有する(生まれながらに持つ)個人として、自らの意思によって日常生活と社会生活を営むことができるようにするとしたほか、当事者の意見表明や社会参画の機会の確保、家族らへの支援などを記した。

 一方、推進体制は、首相を本部長とする「認知症施策推進本部」を設置。
 
国に施策推進基本計画の策定を義務付け、都道府県や市町村の施策推進計画の策定は努力義務とした。計画策定に当たっては、認知症の人や家族らの意見を踏まえることとした。

 基本的施策には、
●国民の理解増進
●本人の意思決定支援
●保健医療・福祉サービス提供体制の整備▽相談体制の整備
●予防や診断・治療、社会参加のあり方などの研究――などが盛り込まれている。

 基本法の制定を受け、既に認知症を巡る施策の充実が図られている。

 11月成立の今年度補正予算には、自治体の計画策定を支援する経費を計上。
12月には、認知症の約7割を占めるアルツハイマー病の原因とみられる物質を除去し、進行抑制を狙う初の治療薬「レカネマブ」について、公的医療保険適用が承認された。これに先立つ10月、認知症の人や家族を手助けする「認知症サポーター」の養成講座で使う全国共通の標準テキストも、認知症を自分事と捉える視点を基本とした内容に改訂された。

 一方、政府の「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」は12月25日、基本法に関わる施策の具体化に向け、有識者の意見を取りまとめた。

<インタビュー>
■正しい知識で自分事に/鳥取大学医学部教授 浦上克哉氏

 ――基本法の意義は。

 がんや脳卒中などと並んで基本法ができたことは画期的だ。国としての明確な姿勢を国民に示したことに意義がある。

 超高齢社会の中、認知症は決して恐れるものではない。「もう治らない」などと不安を抱く人もいるが、末期でなければ、物忘れはあっても穏やかな生活は送れる。基本法にある通り、認知症に関する正しい知識と当事者への理解を国民が深め、自分事として考える大きなきっかけにしなければならない。

■地域とつながり切らさず

 ――共生社会の実現に必要な視点は。

 認知症の人が偏見の目にさらされず、これまで同様、地域や社会とつながりを持って生きていけることが大切だ。

 国は当然だが、自治体も啓発に努め、施策の推進に力を尽くしてほしい。今ある施策も充実させることが求められる。地域で高い効果が得られることが国民の関心を高めることにもなる。

 ――基本法には予防についても盛り込まれている。

 予防と言っても、発症しない一次予防、早期発見・治療の二次予防、認知症の進行を防ぐ三次予防と、予防の中身を広義に捉えることができる。早期発見し、適切に対応すれば急激な進行を防ぐことも可能だ。

 特に、発症前の段階である軽度認知障害(MCI)の段階で対応できることが望ましい。その意味でも、日常生活の中で違和感を抱いたら、気軽に相談でき、よりスムーズに病院で受診できる体制づくりが大事だ。


 うらかみ・かつや 1956年、岡山県生まれ。鳥取大学医学部卒。同大学院博士課程修了。認知症専門医。日本認知症予防学会代表理事。


■人間としての尊厳望む/日本認知症本人ワーキンググループ代表理事 藤田和子氏

 私は2007年6月に若年性アルツハイマー病と診断された。その1年ほど前から、曜日や時間の感覚がはっきりしない、友人と会う約束の時間が分からなくなるといった異変はあった。ストレスや過労によるものと思い込み、前兆だという認識は全くなかった。

 しかし4月、食後に用意していたはずのコーヒーゼリーがないため、娘が食べたと思って確認すると、私が食べていたことを知らされた。当時、私は45歳。さすがに年齢による物忘れとは思えず、認知症の可能性を疑った。診断を受けた時は「やっぱりそうか。日々の違和感は病気のせいなんだ」と、納得してほっとした。同時に、今後の不安が頭をもたげた。

 振り返れば数年前から前兆はあったのだろうが、発症した時期は分からない。最初は気付きにくく、早い時点で気付くことができるかが大事だ。治療により進行を遅らせる薬を内服し始めた。当初、薬の効果を感じたが、症状は徐々に進み、できないことも増えている。検査をすると脳の萎縮も徐々に進んできている。

 私の場合、家族や周囲の人が私を認知症だからと特別扱いせず、助けてくれる部分もあれば、頼ってくれる部分もある。私がやってみようとすることを理解して、後押ししてくれる人たちに支えられ、自分らしく暮らすことができている。

 一方で、そうではない環境で苦しむ認知症の人も多く、認知症に関する正しい知識と、当事者への理解を深めることが欠かせない。偏見を持って見られることが、病気である以上に生きづらい社会をつくっている。生活上の多様な障壁を解消するための社会環境の大切さを痛感している。

 日本認知症本人ワーキンググループを仲間と共に立ち上げ、当事者の声をあらゆる場面で発信し国会にも届けてきた。グループで発表した「認知症とともに生きる希望宣言」が基本法の制定に影響したことは、感慨も大きい。

 法律の策定段階では、私たちの提案の多くが反映された。当事者が参画する、このプロセスが重要で、今後、国や自治体で推進する全ての施策で当事者の参画が進むことを期待したい。

 基本法には当事者が個性ある一人の人間として尊厳と希望を持ち、自分らしく当たり前に暮らしていけることが明記された。人権が守られないと私たちの生きづらさは解消されない。症状が進行していった時に介護施設や病院が本人にとって安心できる環境であることも大切だ。

■誰がなっても安心の生活環境を

 また基本法は、認知症の人と共生するための法律ではないことを伝えたい。「共生社会の実現を推進するための」という名称となったが、当事者に何かをしてあげるためではなく、国民の誰が認知症になっても地域で安心して暮らせる共生社会をつくることが目的であることを分かってほしい。

 まずは、基本法の目的が多くの国民に伝わることが第一であり、国や自治体は啓発を強化してほしい。それとともに、行政の職員や専門職、地域の人らが当事者と関わる機会を増やしてほしい。関わることで理解が深まり、古い常識(認知症観)の殻を破り、新しい常識を持つことにつながる。

 

公明新聞 2023/12/26 3面

  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

世田谷区議会議員     福田たえ美

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